介護職員初任者研修と実務者研修の違いとは?
ここでは介護資格を持っていない人へ向けて『介護職員初任者研修』と『介護職員実務者研修』の違い、どちらの資格を取るべきか?
それぞれのメリット、デメリットを上げて解説していきます
どちらも無資格・未経験でも取得可
介護職員初任者研修も実務者研修(介護福祉士実務者研修)も介護資格の入門資格に位置するものです。
どちらも全くの無資格・未経験で取得できる資格です。
初任者研修はかつてのホームヘルパー2級相当の資格、一方の実務者研修は基礎研修・ホームヘルパー1級とほぼ同等の資格になります。
実務者研修は初任者研修の上位資格
介護職員実務者研修は介護職員初任者研修の一つ上位にあたる資格になります。
実務者研修 = ホームヘルパー1級相当
初任者研修 = ホームヘルパー2級相当
実務者研修は初任者研修よりも上位の資格なので勉強する範囲が広いです。
取得するために必要な時間も初任者研修に比べ大幅に多くなります。
勉強時間は初任者研修の3.5倍!
資格 | 取得にかかる時間 |
---|---|
初任者研修 | 130時間 |
実務者研修 | 450時間 |
初任者研修の収録にかかる時間(カリキュラム)は全130時間です。
一方で実務者研修にかかる時間は全450時間。単純計算で資格取得にかかる時間が約3.5倍になります。
実務者研修(通信)は直接講習が少なく経験者向き
実務者研修も初任者研修も通信コースが人気です。
通信コースとは通学が必須と決められているカリキュラムの範囲だけを通学で学び、残りの部分はテキストで自宅学習する方式です。
通信コースは非常に人気があり、講座開催数も多いのが特徴です。
実務者研修と初任者研修ではスクーリングに必須と決められている時間の比率に大きな違いがあります。
スクーリングが必須な時間の比較
資格 | 通学が必須な時間 |
---|---|
初任者研修 | 90時間(全日制で約15日) |
実務者研修 | 57時間(全日制で約10日) |
学習範囲は実務者研修の方が圧倒的に多いのに「通学が必須」な時間は初任者研修の方が多く、逆転しています。
このことからも初任者研修は初心者向け、実務者研修は介護職経験があるなどある程度経験者向けであることが見えてきます。
また、実務者研修に多くの通信範囲が認められているのは介護ヘルパーとして働きながら取得する方への配慮という理由もあります。
自宅学習はテキストを見ながら自分で勉強し毎回出される課題を提出する形になります。
実務者研修の通信コースでは自宅学習の範囲が多いため、ある程度の知識がないと勉強に躓きやすいので注意が必要です。
介護職未経験者や自分で勉強するのが苦手な方は「通学コース」も視野にいれて検討しましょう。
初任者研修は初心者向き
初任者研修はスクーリングの比率が高く、直接、講師の講義や指導を受ける部分が広く取られているため実務者研修に比べ初心者向きです。
実務者研修が経験者向き、と言われる理由もここにあります。
「スクーリングって面倒だな」という気持ちもあるかもしれませんが講師の体験談なども交えた講義はあなたの将来のメリットになるはず。
自宅学習というと楽なイメージがありますが実際に自分一人でテキストで勉強するのはなかなか難しいものです。
特に未経験で知識ゼロの状態ではなおさらですね。
難易度の違い
実務者研修の方が上位資格ですので難易度は高いです。
初任者研修よりも学習範囲が広く、初任者研修よりも一歩踏み込んだ難しいことを勉強します。
実務者研修に修了試験はありませんが、多くのスクールでは自主的に「介護過程」と「医療的ケア」の部分に筆記試験や実技試験などの検定を設けています。
そのため、実務者研修には試験がないから「テキトーにやってても資格は取れる」「初任者研修より簡単」と考えるのは間違いです。
検定をクリアできない限り先には進ないようになっているため、いい加減な考えの人は資格が取れないようになっているんです。
初任者研修はそもそも未経験者・初心者向けの介護資格なのでカリキュラムさえちゃんとこなせば誰でも取得できる資格となっています。
修了試験として筆記試験とスクールによっては実技がありますが、
習熟度の確認試験的な位置づけのものなので難易度は低く、心配は不要です。
取得費用の違い
おおよそですが実務者研修は初任者研修の費用の2倍強といったところです。
資格 | 費用の目安 |
---|---|
初任者研修 | 6万円~ |
実務者研修 | 13万円~ |
もっと安い講座などもありますが一部の地方だったり、開催数が極めて少なかったりということがあるのでこのくらいが目安と思おけば大丈夫です。
実務者研修の場合、有資格者は受講免除の範囲があり、その分ここに記載した費用よりも安く抑えられます。
※有資格者とは ホームヘルパー[1/2/3級]・介護職員基礎研修・介護職員初任者研修のこと
就職条件にマッチすることが条件ですが、無料で資格を取らせてくれるサービスもあります。
詳細は以下のページで
実務者研修を取るメリット
介護福祉士の受験資格になる
実務者研修を取得して3年の実務経験を積むと「介護福祉士」という国家資格の受験資格がえられます。
介護職として今後キャリアアップを目指すなら実務者研修をとっておくことはおおきなメリットになります。
サ責になれる(就職、待遇で有利に)
実務者研修を取得すると「サービス提供責任者」通称「サ責」になれるのも介護職員初任者研修との違いです。
このサ責というのは介護を行う事業所では入所者の数に応じて一定の割合の人員が必要となるもので事業者から必要とされる存在です。
引く手あまたの介護業界ですから就職の心配はないかもしれませんが、サ責になれば職場での扱いや手当などの待遇、お給料も違ってきます。(仕事の責任も増えて大変ではありますが)
「たん吸引」と「経管栄養」など一部の医療行為ができる
別途、病院・施設などでの実習が必要ですが実務者研修修了者は「たん吸引」と「経管栄養」など一部の医療行為ができます。
職場でもより貢献できる人材になるため、やりがい&お給料アップにもつながります。
お給料が高い
実務者研修と初任者研修、持っている資格でどれほどお給料に違いがあるのか?
毎年、厚生労働省が調査して公表しているデータがあります。それでは最新の平成29年度のデータをみてみましょう。
※常勤者のデータ
※金額はボーナスなどの一時金や手当も含んだもの
資格 | 平均給与額 | 平均勤続年数 |
---|---|---|
実務者研修 | 289,700円 | 6.2年 |
介護職員初任者研修 | 281,550円 | 6.4年 |
このように初任者研修と実務者研修では月給にして8,150円、年間で計算すると97,800円の差があります。
働く職場によって資格手当がない場合もありますが、全国的な傾向をみると実務者研修には給与面のメリットも大きいことがわかりますね。
ヘルパーとして働くならできるだけ早く取得しておきたい資格です。
実務者研修のデメリット
時間がかかる
初任者研修に比べ3.5倍と多くの時間が必要になります。
そのため途中で心が折れてしまったり、早く就職したい方にはデメリットになります。
自宅学習の範囲が広く、未経験者には内容が難しい
経験者にとって自宅学習の範囲が広いのはおおきなメリットです。
ただし、知識ゼロの未経験者にとっては内容が難しくデメリットになりえます。
いきなり責任の重い業務になることも
実務者研修を取得するとサ責(サービス提供責任者)になることができ、給与面、待遇面での優遇が期待できます。
その反面、背金の重い業務を任される可能性があります。
介護職未経験の方にとっては肉体的、精神的な重荷になることも。
初任者研修のメリット
短時間で取れる
あなたが就職を予定しているなら短時間で取れるのは大きなメリットですね。
初任者研修の場合短期コースなら約1ヶ月で取得することができます。
短時間で取れるので就職までのタイムロスが少なくて済みます。
学んだ部分は実務者研修で免除される
初任者研修で学んだ部分は実務者研修を取るときに役立ちます。
カリキュラムをこなした130時間がそっくりそのまま免除されるんです。
なので初任者研修を先に取ってからその後で実務者研修を取る場合と、無資格からいきなり実務者研修を取る場合と
学習時間は同じなんです。
持っている資格 | 免除される時間 | 受講時間 |
---|---|---|
なし | なし | 450時間 |
介護職員初任者研修 | 130時間 | 320時間 |
介護職デビューに適した知識レベル
介護職員初任者研修では介護ヘルパーとして働くための『基本的な知識』を学びます。
車いす・ベッドへの移乗やコミュニケーション技術、認知症の理解などです。
一方で実務者研修ではもう一歩踏み込んだ介護の知識まで学習します。
経管栄養(胃ろう・腸ろう)や救急蘇生法・たんの吸引など医療ケアに関するものなどです。
実務者研修はどちらかというと経験者向けの内容が多いので初任者研修のレベルの方が介護職デビューには適しています。
初任者研修のデメリット
介護福祉士の受験資格にはならない
3年間の実務経験を積むと国家資格である『介護福祉士』が受験できるようになりますが、実務経験に加え実務者研修の修了が条件となっています。
実務者研修が欲しくなった時、仕事をしながらの勉強になる
キャリアアップを目指したくなった時、実務者研修は避けては通れません。
お仕事をしながらの取得となるとある程度の負担は覚悟が必要です。
実務者研修に比べ通学が必要な範囲が広い
初任者研修は初心者向けということもあり実務者研修に比べ通学が必要な時間が多くなっています。
深く学び、スキルを身につける、という点ではメリットですが、通学にかかる負担はいなめません。
【まとめ】経験者は実務者 未経験者は初任者がおすすめ
実務者研修 | 初任者研修 | |
---|---|---|
資格レベル | 旧ホームヘルパー1級相当 | 旧ホームヘルパー2級相当 |
カリキュラム | 全450時間 | 全130時間 |
通学必須な範囲 | 61時間 | 90時間 |
費用目安 | 6万円~ | 13万円~ |
介護福祉士の受験資格に | なる | ならない |
傾向 | 経験者向け | 初心者向け |
介護職デビューなら初任者研修がおすすめ
介護職未経験の方には断然「介護職員初任者研修」をおすすめします。
なぜなら介護のお仕事とは精神的にも肉体的にもタフさが求められ『向き・不向き』があるお仕事だからです。
まずは介護という仕事が自分に務まる仕事なのか?生涯の仕事として自分に向いているのか?実際に働いて経験することが何より大事ではないかと思います。
キャリアアップを目指すなら「私はこの業界でやっていくんだ!」という意思が固まってからでも遅くはありません。
経験者なら実務者研修がおすすめ
介護職経験があり、ケアマネージャーなど、どんどん上を目指したい!
一家の大黒柱だから、じゃんじゃん働きたい!という方、学習に十分な時間が取れるなら実務者研修を受けるのがおすすめです。
研修費用は実務者研修の方が高額ですが、将来への投資だと思えばそこも納得できるでしょう。
介護職員初任者研修を受けるのがいいか?それとも一気に実務者研修まで取っておくのがいいのか?は「介護業界で働いていく意思が固まっているか」で変わってきます。
「私にも務まるか不安」という方はまずは、手軽な介護職員初任者研修を取得し、介護の世界で働いてみることからはじめてみては?
実務者研修・の正式名称って?
実務者研修の正式名称は一般的には『介護福祉士実務者研修』といいます。ほかにも介護実務者研修であったり介護職員実務者研修と呼んだりすることもあり正式名称がハッキリしていませんが履歴書には「介護福祉士実務者研修課程修了」と記載すればOKです。
ちなみに初任者研修の場合、履歴書には『介護職員初任者研修課程修了』と記載します。
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改名で間違いワードが続出
ホームヘルパー2級から介護職員初任者研修へと改名され「覚えにくい」「難しい」との声が多くなりました。確かに覚えづらい感は否めませんね。
ここへ訪れる方も未だにホームヘルパー2級で検索されている方やその他、間違ったワードで訪れる方が跡を絶たちません。
よく間違われるワード
介護福祉士初任者研修・介護ヘルパー2級・介護ヘルパー初任者研修・介護初任者研修・介護職初任者研修・初任者研修・・・など
実はホームヘルパー2級の時も正式名称は「訪問介護員2級養成研修課程」という少々覚えにくいものでした。呼び名は「ホームヘルパー2級」でも履歴書へ書くときはこの正式名称を記入していたわけです。
介護職員初任者研修になってからはホームヘルパー2級という呼び名そのものが無くなってしまいました。呼び名は「介護職員初任者研修」、履歴書へ書くときは正式名称の介護職員初任者研修課程(修了)と記載します。
間違いワードは情報収集の妨げになる事もあるので正しい「介護職員初任者研修」という名前を覚えておきましょう。